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2009年9月24日掲載

現代美術も楽勝よ。

アーティスト・アイズ vol.1 『現代美術も楽勝よ。』展 水戸芸術館現代美術ギャラリー 「芸術」と「社会」の対話への意欲的なチャレンジ

<アーティスト・アイズ>は、アヴァンギャルド映像作家、黒川芳朱氏がセレクトしたアート、シネマ、ステージのレビューです。第1回は、水戸芸術館現代美術ギャラリーの『現代美術も楽勝よ。』展を紹介します。とかく難解といわれる現代美術の楽しさを伝えるためにいくつかの仕掛けをしている今回の展覧会、はたしてアーティストの目にはどう映ったのか?

(取材・文 黒川芳朱)

現代美術の大御所から若手までラインナップ

水戸芸術館で『現代美術も楽勝よ。』というめちゃめちゃとっつき易い、だがふと考えると難解なタイトルの展覧会が開かれています。何がどう楽勝なんだんべ。さっそく水戸に向かいました。上野からJR常磐線で片道2,210円、特急で3,820円です。

現代芸術はわからないというイメージがあります。このことに芸術の側は危機感を持ち、なんとか社会との対話を回復したいと考えます。パブリックアート、ワークショップ、対話をシステム化するさまざまな方法も考えられてきました。このタイトルも、そういった意識の現われでしょうか。展示されているのは水戸芸術館の所管作品ですが、単なる所管作品展ではなく企画性と仕掛けにとんでいます。

展示風景

水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景(撮影:加藤 健 / 写真提供:水戸芸術館現代美術センター)

一般入場料800円を払い会場に入ると、床にはロープでできた人型、作品の横には作品を梱包してあった木箱や工具が置いてあります。なんじゃこりゃ。謎は後で判明します。

曽根裕、畠山直哉、I.F.P.、小林孝亘、アニッシュ・カプーア、河口龍夫、イリヤ・カバコフ、川俣正、蔡國強、クリスト&ジャンヌ=クロード、王慶松、マグダレーナ・アバカノヴィッチ、ベルナール・フォコン、ロバート・メープルソープ、日高理恵子など、現代美術の大御所から若手までの作品が、ゆったりとしたスペースに並びます。

想像を楽しみ、体験を味わう。アートのチャレンジ

展示風景

水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景(撮影:加藤 健 / 写真提供:水戸芸術館現代美術センター)

全体は「○」「風景」「空を見上げる」「人間」「自然」「闇」など、テーマごとの九つの部屋で構成され、壁にはテーマにちなんだ言葉がプリントされています。「○」の部屋には〈気構えず 肩の力を抜いて よくみてみよう、「○」。楽勝 楽勝!!〉。現代美術版相田みつをでしょうか。めまいがします。「風景」の部屋には〈開いてみよう 社会の窓。そこから見える何かがある〉、あたりに女性もいたので「開く」のはやめました。

絵画、写真、インスタレーション、映像、表現方法は多様で、観客はいろいろな楽しみ方ができます。野村仁の化石と地図を組み合わせた作品を前に太古からの時間を想像し、ジェームズ・タレルの作品は中に入って10分間暗闇を体験するといった具合に。私はジュリアン・オピーの『歩く人々』というシンプルなアニメーション作品にリアリティを感じました。非常口や信号機のマークのような歩く人々。でもよく見ると、服装や体形がすべて違います。作品の脇の説明プレートによれば、一見記号化されて見えるが現実の人間をモデルに描き起こしているので一人としておなじ人間はいないとのこと。