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  3. vol.1 『現代美術も楽勝よ。』展 水戸芸術館現代美術ギャラリー

フィールドとアーティストの関係、リアリティとは・・・

展示風景

水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景(撮影:加藤 健 / 写真提供:水戸芸術館現代美術センター)

現代美術のわかりにくさのひとつに、リアリティをどこに見出し、どう提示するかに重点を置いている点があります。たとえば、第6室の中ほどに、大きなガラス窓がありメッシュのブラインドがかかっていました。窓の外には何本もの朝顔のつるが垂直に走り、日差しでその影がブラインドに投影され見事な自然の壁画を描き出し、床にも反射しています。窓だと思ってうっかり見過ごすかもしれませんが、これは日比野克彦の作品なのです。

アーティストは、自分のいるフィールドからリアリティを発見しすくい上げ、もっともふさわしいと思う方法で提示します。風景に感動し、絵を描くかもしれず、木の枝を持って来てインスタレーションにするかもしれません。それを見て、作者とフィールドとの関係に想像が及ばないとさっぱり面白くないでしょう。意識がおよべば多くの現代美術はリアルなはずです。この展覧会の説明書きには作者の意図、発想、材料などが記され、フィールドとアーティストの関係が浮かび上がります。説明によって頭でわかるのではなく、感覚体験がうまく誘導されるのです。

アートを社会に開く試み

展示風景

水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景(撮影:加藤 健 / 写真提供:水戸芸術館現代美術センター)

作品の脇に放置された道具類などは、Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)制作の映画『学芸員Aの最後の仕事』の大道具でした。この展覧会の構成も彼らの企画であり、会場すべてが映画のセットだったのです。うーむ、見事な逆転。映画は、『現代美術は楽勝よ。』展を企画した学芸員Aが開催の二日前に殺され、主人公を中心に彼のダイイングメッセージを解いて最後は楽勝ダンスを踊るというものです。スタッフやキャストも一般公募で集めたそうです。アートを社会に開く試みの一環ですね。もっとも、内容は残念ながら寒い映画でした。ストーリーは退屈、公募でキャストを集めたことが楽屋落ちの拡大に見えてしまいます。素人の参加がプラスに働くとよかったのですが。

水戸芸術館が積み上げた実績と実験的アプローチの入り混じった面白い展覧会でした。失敗と思える点もありましたが、それも含め芸術と社会の対話への意欲的なチャレンジです。ただ、「楽勝」という言葉は、対話を呪縛しているように響きました。(文/ 黒川芳朱)


『現代美術も楽勝よ。』展
水戸芸術館現代美術ギャラリー
http://www.arttowermito.or.jp/art/modules/tinyd0/index.php?id=9
会期: 2009年8月29日(土)〜10月12日(月・祝)