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言葉の風
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1960年代のもうひとつの戦争

「交通戦争」なる言葉が1960年代にあった。
その時代はちょうど小学生だった。
戦争というぐらいだから、
それだけ交通事故による犠牲者が多かったのだ。
なんでも日清戦争の戦死者数を超えるほどの増え方をしていたらしい。
子どもというのは、万能感を持っている。
クルマにはねられた程度でケガなどするはずもないし、
ましてや、死ぬなどということは絶対に起こらないと、
当たり前のように思っていた。
小学校、中学校を通じ、まわりで交通事故で大けがを負ったり、
亡くなったという者は出なかった。
ただ、ある晩、見せられた「交通事故」だけは、
いまだに忘れられない。
「交通戦争」時代にあったことだ。
お盆の祭りの日に町内の広場で映画上映があるというので、
近所の友だちと喜び勇んで出かけた。
広場には、普段見ない白い大きな幕が張られており、
みんな期待で胸が高まったが、
はじまったのは、ずばり「交通戦争」というタイトルの映画だった。
バイク事故で飛ばされた片腕が路上にころがっていたり、
ぐっしゃりとつぶれたクルマの下にまっくろな血の海がひろがっていたり、
衝撃的な内容の映像がつづいた。
モノクロの暗い画面に男の無機的なナレーション、そして、
アーンアーンアーンと鳴く陰鬱な救急車のサイレン。
ただ、ただ呆然としていた。
いちばん怖かったのは、公園や校庭で遊んでいるおおぜいの子どもたちが
次々と消えていくシーンだった。
無人でゆれているブランコ、ボールだけが地面で勝手にはずんでいる。
失われゆく人々の量を視覚的にみせようとしたのだ。
その晩、おそらくなかなか寝付かれなかったはずだ。
今日、所轄の警察署へ出向き、運転免許の更新手続きをしてきた。
おきまりのビデオ講習があった。
おもしろくないのはしょうがないにしても、
もう少し、インパクトがあってもいいと思った。
掲載写真は、警察署の帰り、たまたま撮影したものをピックアップしたのだが、
そういえば、昨年、ここに映る交差点で大きな人身事故があり、
信号待ちしていた3人もの命が一瞬で失われた。
いま、それを思い出した。

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