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言葉の風
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くもの日記ちょう

こころの底で思っていることを
言葉やかたちにしようとしたならば、
おそろしいことと、おろかなことだけがあらわれて
それで、こころはカラッポになってしまうのではなかろうか・・・。
そんなこころも困ったものだが、
人間にのこころのなかには想像の空間という領域がある。
ここは「自由世界」だ。
ただ、自由になれるし、自由になれない、
どちらも自由に選ぶことができる、という意味での「自由世界」だ。
感情や本能に翻弄されるイマジネーションは自由ではない。
不自由以上に苦悩をうむことになるだろう。
想像力のいちばんのパワーは、まさにそこから解放してくれることにある。
長新太(ちょう・しんた)さんは爆弾のような絵本作家だ。
ページをめくると、思いもつかない世界が炸裂し、
楽しい爆風に吹き飛ばされてしまう。
思い浮かべて描いていたら、こんな絵はできないだろう。
長さんのこころや頭のなかに想像の空間があるのではなくて、
紙の上と絵筆のあいだにそれはあるのだと思う。
その極小のすきまからビッグバンのように色とかたちが
うまれてくるのだ。
『くもの日記ちょう』では、
主人公の"くも"がその自在にかわる姿かたちを自ら楽しんでいるように、
日記では、言葉が言葉そのものを楽しんでいるようだ。
極太の万年筆で書かれたらしい手書きの字も、
ひとつひとつが表情となってページをにぎわしている。
この絵本にあらわれたものはすべて有機的だ。
しかもこころや頭からではなく、無から発生している。

『くもの日記ちょう』 長 新太 (著)

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