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言葉の風
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西空とギルバート・オサリバン

物心ついた頃から、なにかに感動すると、
外へ飛び出したくなる性向があった。
栗塚旭が主演していた「風」という時代劇が
1968年頃に放映されていた。
浪人風の剣豪が活躍するのだが、
これが大好きで、小学6年生のときに毎週かかさず観ていた。
"風の新十郎"は、サムライのくせにやけに彫りの深い顔をしており、
またそれがかっこよかった。
当時はバタ臭いのが人気顔だった。
最終回のときはテレビの前に陣取り、
目を皿にして白黒画面をみつめた。
そこまで熱中していたにもかかわらず、
ドラマのなかのシーンはひとつも憶えていない。
ただ、番組が終わった後、感極まり、庭先へと飛び出し、
しばらく夜空をみていたことは憶えている。
そんな息子を不思議そうな顔でのぞき込んでいた
母親の顔も記憶にある。
映画館でいい作品を観終え、
明るい外へと出た時のなんともいえない充実感と開放感。
スクリーンの世界から現実に戻されるのだけど、
現実は、しばらくロマンやドラマを泉のようにたたえている。
そんな幸運と幸福があったときは、
映画館を出てからしばらく歩きつづける。
きょうは仕事で一日部屋にこもった。
夕刻近く、ギルバート・オサリヴァンのCDをかけた。
自宅スタジオで録音したというピアノの弾き語りが、
シンプルで歯切れよく、爽快だ。
『スクラフ・アット・ハート』は、
オサリバンが60歳のときにリリースしたアルバム。
曇りがかった西空を眺めながら聴いていると、
からだなのか、こころなのかどこかわからないが、
脈搏のようなチカラがわいてくる。
外に飛び出したくなってきた。
この感覚がだいすきだ。

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