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言葉の風
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真っ暗がすき!

夜は人通りの絶えた道を歩く。
クルマの通る道路はできるだけ避け、
外灯がなくても携帯LEDをポケットに忍ばせて、
暗がりの小径を突き進んでいく。
少し霧がかった晩なら、懐中電灯から伸びた青い光は、
木々や白い闇をを軽快に切ってみせる。
もちろん、真っ暗闇など自分が暮らす街にはない。
都会では、静寂や闇に浸れるわけにはいかない。
たまに、真夜中、トイレから出てライトを切った瞬間、
目の前が真っ暗になることがある。
まわりの照明をつけるのを忘れていたのだ。
瞳孔が絞られたままなので、擬似的な闇に立つことになる。
ちょっとした不安と眩暈(めまい)を覚えるが、
これがなかなかの快感で、しばらくそのままでいる。
じきになんらかの灯りや明かりが触手を伸ばすようにして
網膜の奥までやってくる。
子どもの頃、たった一度だけ、一切、光のない世界を体験したことがある。
戸外だったが、黒い粒子のようなものがサラサラと目の前を流れてきた。
やがてリキッド状となった闇が全身を蔽い、
何もかも掻き消してしまった。
あのときの闇は、物だけでなく、光をものみ込む川だった。
なにもかもが見えないのではなくて、
闇そのものの姿がはっきりとあった。
あれは一種の物性だと思うが。

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