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言葉の風
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眠っても『ツィゴイネルワイゼン』

映画というものは、はじまりからそのおわりまで、
どっぷりと浸って観ていたいものだ。
けれど、どんなに面白い映画でも眠くなるときは眠くなる。
映画館で睡魔に襲われるのはしょっちゅうだが、
それこそ、腿の肉をツネリツネリ、必死で映画に食らいつく。
ほとんどの映画館は入れ替え制なので、
その回が終了すれば、追い出される。
これが自宅でDVDなどの鑑賞となると、コロリと眠ってしまう。
正直、3本に1本は居眠りにより、途中から見直す。
これは面白いとか、面白くないとかの問題ではなく、
その日の睡眠時間や体調による。
つまらないものは、すぐにわかるので居眠りする前に、
デッキからイジェクトされる。いま時間ほど貴重なものはない。
鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』を観た。
2時間20分ほどの映画で、公開された1980年当時から
難解な作品と評されていた。2度ほど"居眠った"。
しかしこれは、怪作にして傑作だ。
まず、美術がいい。大正浪漫をモチーフとし、邸からインテリア、服飾、
小物にいたるまで映像に入るものすべてが徹底されている。
徹底されているのはもちろん美術担当の美意識。
美術は木村威夫。92歳となる現在、映画監督としても活躍している。
俳優は、原田芳雄と藤田敏八。女優は、大谷直子に大楠道代。
ストーリーがメロデイならば、役者は音色である。
不可思議な物語のなかで、
登場人物たちは、忘れようにも忘れられない特異な音色を出し合う。
この音色だけでも充分に映画の快感を味わえる。
つぎに何が起こるかわからない展開。
もう一度、いや二度、三度と観たくなる映画かもしれないが、
その都度、何が起こるかわからないような気がする。
原作は、内田百閒『サラサーテの盤』。
怪奇をも含んだ作品だが、むろん怪奇映画ではない。
上映中、鈴木清順は、あるシーンが気に入らなくて撮り直しを行う。
そして、上映2週間後にフィルムを差し替えたという驚くべき映画でもある。

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