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言葉の風
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『ちいさな島』 ゴールデン・マクドナルド作

故事『井の中の蛙』は、<凹の物語>だが、
ゴールデン・マクドナルド作『ちいさな島』は、
<凸の物語>である。
どちらも、ちいさな世界を舞台とする。
一方は一匹のカエル、そして、
もう一方は、海に浮かぶ孤島が主人公だ。
どちらも孤立している。
ただ、ちいさな島には、潮が寄せて引くだけではなく、
野花が咲き、梨の木が根を張っている。
海からロブスターやアザラシがやってくる。
カワセミが巣を作りに飛んでくる。
なんといっても季節の移り変わりがある。
ちいさいながら、じつに豊かな世界となっている。
そこへ一匹の子猫が人間たちとヨットでやってくる。
子猫は、ちいさな島を、ちっほけなやつだと馬鹿にする。
ちいさな島は「きみだって そうだよ」という。
でも、ちっとも馬鹿になんかしていない。
自分がちっぽけだ。ということを知っているし、
それでいっこうにかまわないのだ。
子猫は、足が地面についた自分は、
おおきな世界とつながっている、と主張する。
ちいさな島は、「わたしだって そうだ」という。
「いいや ちがうね」と子猫。
ちいさな島は、あまり議論が好きじゃないようだ。
自分から反論はしない。
子猫はこのあと、真実を知るのではなくて、
真実を信じるという、ものすごい経験をしてしまう。
絵本のなかの2ページに満たない世界でのことだ。
このページは、子猫が主体となった、また別の世界を構成している。
<凸の物語>のなかの<凸の世界>だ。
さて、井の中の蛙は、凹みという無知と不毛からはい出て、
世界というものを知らなくてはならないのが。
ちいさな島はそのままだ。
なぜなら、
「世界につながりながら
 自分の世界をもち
 かがやくあおい海に かこまれて」
いるのだから。
堂々と、
ちいさな島であることをつづける。
 
※「」内は、『ちいさな島』谷川俊太郎氏の訳文を引用。

『ちいさな島』

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