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言葉の風
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165,439字。文字のちり、文字の山

41年前の日記帳がある。
と書いて、いま一瞬、自分が老人にでもなったかのような錯覚を覚えた。
さりげなく、20年前、30年前と振り返る日々を持つに至ったが、
41年前というのは、現在、40歳の人がこの世界に存在しないほど、
昔のはなしだ。「光陰矢のごとし」。
時間というのはまっしぐらに進む以外のなにものでもない。
それにしても41年も前のことを書く年齢になったことに
ため息さえ出ない。
日記帳は、12歳の誕生日に父親から贈られたものだ。
日付入り、クロス貼りの立派なものだった。
年の瀬に生まれたので、プレゼントとしては当を得ている。
翌春から中学生で、いわゆる児童期から思春期への変わり目でもあった。
それまで日記などつけたこともなく、
椅子にすわって、机にむかうなど、拷問のようなもので、
贈られたときは複雑な気持ちだった。
ただ、子どもの目からみれば、大人用の日記帳は、背に箔押しされ、
金色のスピンもついた荘厳な品物で魅せられずにはいられなかった。
家族みんなの前で、毎日、書くことを誓った。
何年か前、実家に帰省しているとき、父親が押入かどこからか、
その日記帳を掘り出してきて、
ふたたび父の手から自分の手元へと帰ってきた。
「おなかがいたいからきょうはもうねる」
「きょう、でんぱとうのところで空とぶえんばんをみた」
「キケガワとけんかした、あいつはこのごろおかしい、きらいだ」
「今日もクラブ活動だ。つかれたからねる」
「おれは●●敦子に恋したらしい」
めくれば、乱暴な字でどうでもいいようなことが
せいぜい1、2行書かれているだけだ。
それでも本人にとって興味が尽きない。
あれこれとそのときの状況を思い出したり、
想像したりする。
父親は81歳になったいまでも、日記をつけているらしい。
おそらく船乗りだった時代に、船員日誌をつけていたに違いない。
その習慣が残っているのだろう。
まさかそれがDNAに乗って渡ってきたわけではないだろうが、
なんとか昨年4月からノンストップで「言葉の風」を書き続けている。
文字数をみたらば、165,439文字がカウントされた。

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