ウェブマガジン「この惑星(このほし)」 > 星ぼしブログ > 言葉の風

言葉の風
100201.jpg

「雪よ、虱のように世界にはびこれ。」

「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」
 
あまりにも有名な三好達治の2行詩。
教科書で習ったこの詩を
雪が降ると、かならず思い出す。
もうひとつ、思い出す詩がある。
 
「雪よ、虱(しらみ)のように
 世界にはびこれ。
 すべての連絡を杜絶(とぜつ)せよ。
 そして、音信不通にしろ。
 
 電話も、手紙もここへはやってはくるな。
 戦争の報道や、
 暴力からこの父をまもれ。
 (略)
 それから、もっとかんじんなことは
 きいても嘔気のくる赤紙が
 子の手元へは届かないように、
 雪よ。八尺も、十尺もふれ。」
 
金子光晴の「雪」という作品だ。
妻と子と三人で戦争を逃れて山中湖畔に
隠れるようにして暮らしていた時期に書かれたものだ。
自分の息子をいためつけ病気にしてでも、
愚かな戦争に取られてはなるものかと、
必死で抵抗した金子光晴。
この詩人が行ったことは正しかった。
子どもが殺されることもなかったし、
殺すこともなかったのだから。
当時、そんなことはだれもができることではなかった。
ただ、親ならば例外なく自分の子どもを
戦争へなど行かせたくはなかったはずだ。
全体という大きな力に流されるか、
たったひとりでも、正しいと思うことを
貫こうとするか・・・。
全体というおそろしい生きものは
いつの時代でもすがたを変えて存在する。

カテゴリ:

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://konohoshi.jp/mt/mt-tb.cgi/176

コメントする