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言葉の風
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小学校のテキ屋さん

小学校の正門前にテキ屋さんがいろんなものを
売りに来ていた時代があった。
ソファで半分うとうとしているとそんなことを突然思い出した。
壁に西日があたり、力ないぼんやりとした矩形の光がどこか見覚えがある。
ああ、このぼんやりとした光りは、
おもちゃのテレビに映った風景に似ている。
放課後、正門近くでテキ屋さんが売っていた手のひらに乗るテレビ。
なんのことはない、すりガラスをブラウン管に見立て、
なかはからっぽの代物だ。
横にレンズ窓のようなものがあって、
鏡をつかってそのレンズ窓から見える光景がすりガラスに映る、
そんな仕掛けだった。
テキ屋さんの口上はこうだった。
「ぼうや、このテレビはなんでも映るんだヨ」
たしかになんでも映った。
『忍者部隊月光』や『隠密剣士』が放映されているとき、
横のレンズを向ければ、手のひらのテレビのなかに、
秋草新太郎や霧の遁兵衛が映し出された。
かなりぼんやりと薄まった存在だったが、それでも
外の世界がまるで自分のものになったようで、
不思議な満足感のようなものを覚えた。
テキ屋さんの売り物でいちばんびっくりしたのは、
中が透けて見える望遠鏡だ。
「女の子のパンツの中なんか、丸見えだヨ」
そういって近くにいた女の子を怪しげな望遠鏡からのぞいてみせる。
キャーといって逃げる女の子たち。
だれかがその望遠鏡を買った。
男の子たちはみんな買ったやつに群がった。
やっとのぞかせてもらうと、
レンズの奥には白いガイコツがぶらぶらと揺れていた。
「こりゃ、見えすぎだよ!」
それがインチキなのか、近くにいた友だちの骨なのか、
その時はわからなかった。
でも、ほんもののガイコツだと思いたかったことだけは
うっすらと記憶する。

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