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言葉の風
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『フローズン・リバー』が魅せるもの

追いつめられた人の顔、
苦渋に充ち満ちた表情、
そんなものみたくないと思うものの、
意外や意外、それが目を離せなくなるほどに
人を魅せるものでもあるらしい。
渋谷シネマライズで上映中の『フローズン・リバー』を観てきた。
舞台はニューヨーク州の最北端、凍てついた冬の町。
ギャンブル中毒の夫にカネを持ち逃げされた白人女が
手付けをうったトレーラーハウスのローンを払えないどころか、
5歳と15歳の息子ふたりを抱えて、その日の食べものにも困る状況。
ふとしたきっかけで、先住民保留地に暮らすモホーク族の女と知り合い、
その女の誘いで密入国を手助けする悪事に手を染めていく。
モホークの女も夫に先立たれ、乳児がいるものの義母によって
母と子の絆を引き裂かれている。
そして、養育費を送らねばならない立場にある。
カネがいるのだ。
町はカナダの国境に面している。
境界はセントローレンス川だ。
モホーク族の保留地は、アメリカとカナダを分かつこの川をまたいで広がり、
州法が適用されない特殊な領域でもある。
氷点下20度にもなり、川は凍結する。
白人とモホーク、2人の母親は、その川をクルマで渡って、
中国人やらパキスタン人をアメリカに密入国させる。
警察は川の中まで、追跡することはできない。
越境可能なフローズン・リバーは、どの国の法律も適用されない、
いわば治外法権の道だ。
しかし、クルマが立ち往生したりすれば凍死の危険もあり、
氷が割れて川底に沈むこともある。
川を渡りきれば、国境と法治国家が立ち阻む。
奇跡のような出来事が物語の中盤とクライマックスに起こる。
あり得ないことだが、これも映画の大切な味覚。
この映画を貫くのは、追いつめられながらも、
ただ必死に生活を維持しようとしている白人女の姿だ。
そのすさまじい顔に、荒ぶる行動に、しかし荒廃はない。
生き抜くこうとする強い力が嵐になっているだけだ。
それが最初から最後まで止むことがない。
パーフェクトだ。

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