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言葉の風
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ミツマタ満開

池のほうから、年配の女性たちが連れ立って歩いてくる。
朝の散歩を心がける人たちが、小川沿いの道を行き交うなか、
みなさん、ちょっとおしゃれをして、
話をしながら、のんびりとやってくる。
まだ9時。日差しが彼女たちの背後にふりそそぐ。
2、3日前から、あちこちでコブシが白い花を咲かせはじめた。
ヤマザクラの蕾はうっすらとふくらみ、コナラの芽吹きも近そうだ。
婦人たちとの間合いがだんだんと短くなってくる。
その中間あたりに、自分の知らない植物が何日も前から白い蕾のような、
花のようなものをちりばめて、その存在をアピールしていた。
そして、気がつけば変身が起こり、黄色い花が咲き始めたのだが、
草木の名に疎いだけでなく、まめに調べる勤勉さもなく、
名無しのまま、道ばたに佇んでいることになった。
その佇んだ低木、明るい空気を発する花々の前にやってきた
ご婦人たちは歓声をあげる。
「まあ、きれいね」
「ここのミツマタ、花ひらくのずいぶん遅いわねえ、
 うちの近所にあるのはもうとっくに咲いちゃってるわよ」
予想通りというか、予定通りというか、
ご婦人方の知識を吸収して、してやったり。
これまで公園や庭園、神社の境内、鉢植えを並べた路地で
なんど年配の女性たちに草花の名を教えてもらったことか。
ありがたいことに、訊ねなくとも
空也像のように方々は、ひらいた口から宙にその名を浮かべてくれる。
皇居東御苑ではハナイカダという、
葉っぱのうえに花を咲かせるおもしろい植物の名が耳元にやってきた。
ミツマタかあ・・・
ミツマタというとギリシャ神話、ポセイドンの武器「三つ叉の矛」を連想してしまう。
たしかに、枝の先端が三つに分かれている。
しかし、全部が全部が三つ叉ではない。
もう少し、いい名にしたらいいのに・・・。
香りはかすかだが、紅茶に似ている。
スパイシーさがあって好きな匂いだ。
樹皮は高級な和紙に用いられるという。
どうして人は草木の名を知りたいのだろう。
やっぱり、だれかにその名を伝えたいから、
知りたいというのが、いちばんだと思う。
まっさきに伝えたいのは、まず自分である。

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