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言葉の風
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一途な女の子を一途に追った映画『ハルフウェイ』   

長身にパッチリした目、
髪がくるくるっととウェーブして、
ときおりみせる笑顔が少年っぽい。
バスケが得意で、頭だっていい。
もてないはずはない男子高生。
その男の子にあこがれる女の子。
ひょんなことから女の子の思いが成就して、
物語ははじまる。
北川悦吏子監督『ハルフウェイ』(2009年制作)
この作品が初監督となる北川氏は、
原作者でもあり脚本も手がけている。
そのせいか、世界がよりピュアに表出されているように感じた。
予備知識は、プロデューサーが岩井俊二で少女が主人公らしい、
ということだけ。
最初のうちは、おきまりの恋愛ものかと、
ほとんど投げやりに鑑賞していた。
そのうちに、次第にうっとうしくなってくる。
映画はよくできている。ロケ地の小樽の風景も美しい。
会話などにはシナリオから外れるような自然さや即興性もある。
近年の邦画でよく見受けるパターンだが、
スタンダードな手法となっているようだ。
さて、なにがうっとうしいのかというと、
金魚のふんのごとく、恋人となった男子と
いっしょにいたがる女子高生そのものなのだった。
彼が早稲田大学を目指しているのがわかると、
行くなと泣きつき、噛みつき、受験勉強さえも邪魔をする。
男子高生もときに爆発するが、決定的な事態には至らない。
イライラしてくるのだが、
それが逆に映画のなかに自分を置くことになっていくようだった。
うっとうしいどころか、
彼女の声、表情、しぐさ、に疲れはじめてさえいる。
同時に自分の意志のようなものが映画のなかで発火する。
自由になりたい。できれば彼女とは別れたい、と。
かつての男の子時代を思い出している自分もななめ後ろから
映画をのぞいている。
年齢を超えた自分とおじさんの自分、
二人の自分が映画をみている。
作品のなかの彼は、自分とはかけ離れている。
彼には、彼女の気持ちに添いたいという心がある。
つねに寄り添ってもらいたい、という
作者の思いそのままの心をもつ男の子なのだ。
彼女は、彼の早稲田受験を応援してやることを、決心をする。
受験で彼が千歳空港へ向かうシーンは、
この映画で唯一ほっとする展開だった。
ところが、ところが、
ラストは、あっぱれというしかないシーンが待っている。
音楽教室で、スティックでドラムを叩きながら
彼女は叫ぶ。
その瞬間、もやもやとしたものが遠く吹き飛び、
正直、胸がきゅんと鳴った。
悪党もライバルも出てこない、
風景に夾雑物が現れない、
女の子の一途さをただひたすら一途に追った映画だ。

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