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言葉の風
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真夏の夜の万華鏡―SHADOW~影を観る

ひさしぶりに気持ちいい朝だ。
夜更けに目が覚めたときは、雨が降りそぼっていた。
寒気も弱く、未明の春雨にしばし耳をそばだて、
それからDVDで河瀬直美監督作品『SHADOW~影』を観た。
「真夏の夜の万華鏡」という100人の映画監督が参加した、
短編オムニバスのなかの一作なそうだ。
これがじつに不思議な作品。
化粧気のない30歳の女性が映し出され、
ドキュメンタリータッチで映画は、はじまる。
と突然、女性にカメラをむけている男、
つまりカメラマンが、
じつは...ぼくがあなたのお父さんだ、と語りかける。
呆気にとられて、笑みさえこぼしてしまう女性。
告白するものと、告白されるもの。
カメラ目線の女性とカメラを手にしたカメラマンの間で
交わされる、とぎれとぎれの会話。
観ているこちらの頭のなかは、こんな映画があるのだろうか? 
と疑問符だらけになる。正確にいえば、こんなことがあるのだろうか、だ。
やがて、女性は事実を受け入れたように涙を流し、すすり泣く。
やおらそれを抱きしめにカメラの前に現れるカメラマン。
注意していれば、カメラは少なくとも、もう1台作動しているのがわかる。
しかし、"実の父と娘"の抱擁は、とても演技とは思えない。
"素"の様相を帯びている。
これが本当の話で、フィクションでないとすれば・・・。
いったいどうやってこの映画は成立できたのか? 
女性とその女性の父親だと名乗る男にしても、
カメラの前でこんな大事なこと、
しかも出生に絡んだプライベートな話をするなど、あり得るのか? 
あり得るのだ。
これまでのドキュメンタリーではいくらでもあり得ることなのだ。
ふたたび、「しかし」がまといつく。
彼女は、あまりに素直に話を受け入れ過ぎてはいないか? 
カメラマンと彼女のこれまでどんな関係にあったのか。
古くから親しい関係があることはそれとなくわかる。
頭のなかは、!?!?!?!?の明滅。
フィクションではないかという証拠と要素を、
まちがい探しのように探している。
と同時に事実という、小説より奇なる展開をも楽しんでいる。
気がつけば、映画の「背後」にあるものと、
「映画」そのものに夢中になっている。
こんな映画ははじめてだ。
フィクションか、そうでないかは、最後の場面近くで
言葉によってほのめかされる。
それでも、いまだに「事実」というものが頭のなかをさまよう。
結論をいうと、
映画が面白かったので、その点はどちらでもいい。

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