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言葉の風
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花に嵐 春は海

風が吹き荒れている。
5時23分。灰色の空。それでも、もう充分に明るい。
いつの間にか、夜が明けるのが早くなった。
関東以北、今月末には日の出時間も5時を切る。
ラジオから今日は雨という予報。
風と雨、週末を前にして桜の花は大丈夫だろうか。
昨夜、満開の桜の下を歩いた。
生温かな晩で、桜は、白くぼぅーとしている。
夜桜の魔力というわけじゃないだろうが、
急に酒を口に運びたくなった。
ここ数日、夜桜の下で酒を酌み交わす人たちも多いだろう。
列島をトラ前線も北上していく。
桜と酒もいいが、春になると海が見たくなる。
学生の頃、伊豆の城ヶ崎海岸へ遊びに行ったことがあった。
春休みのことだ。断崖絶壁の岬を遊歩道がつづく風光明媚なところだ。
よく、サスペンスドラマの舞台ともなる。
ところどころに海をのぞき込むスポットがある。
遠く海を眺めるというよりも、
切り立った岩に打ち寄せる眼下の海をみつめ、
砕ける波濤の音を聞き、潮の風を受ける、そんな場所だった。
忘れられないのは、目の前で深くうねる海の色だった。
黒潮の雄渾さというのだろうか、藍色をした海の圧倒的に気高い質感と
白い波とうねりの間にときおり浮かび上がるコバルト色は
天よりも天上的な色で、いまも心から消えない。
おそらく、この記憶が春、海へと駆り立てるのだろう。
もうひとつあった。
16歳。ひとりで松島近くの海岸へ行ったことがあった。
買ったばかりのビッグジョンの上下のデニムを着て出かけた。
まだ、寒かったが、それが一番のおしゃれ着だった。
海岸に、同じ年頃の少年と少女、2組のカップルがいた。
海をながめたり、砂浜を歩いたりして、時間をつぶしていた。
自分とは違う世界にいると思った。
うらやましいというよりも、恥ずかしい気持ちになった。
ひとりぼっちというのが、きっとみじめだったのだろう。
白い砂浜がまぶしいだけで、なんらいい思い出ではないのだが、
この記憶も春、海をみたいという衝動の底にある。

 

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