ウェブマガジン「この惑星(このほし)」 > 星ぼしブログ > 言葉の風

言葉の風
100424.jpg

かなしみは強かであることを―ナーガさん

今週木曜、三軒茶屋「カフェ・オハナ」で、
ナーガさんの朗読を聞かせてもらった。
詩の朗読というものが、はじめて、
こころに沁(し)みた。
トカラ列島・諏訪之瀬島から、
はるばるやってきた詩人は、ステージに立ち、
マイクを前に終始うつむき加減。
目を上げれば遠く海をみる視線。
手で広げた詩集に目を落とし、
口からひとつ、ひとつ言葉を空気に乗せていく。
やってくるのは、気管からの低い響き、だれもみていない風景、
瞬間の思惟(しい)と一瞬の物語。
たったひとりのクワァルテットに、
目を閉じて耳をかたむけた。
元気になるわけでも、こころが晴れるわけでもない。
ふかく、ふかい静寂が満ちてくる言葉と声の合奏に
耳をかたむける。
かなしみが優しく、
かなしみは強かであることを、
詩人は、微妙に空気を振るわせながら
教えてくれる。
となりに座る若い女性が身じろぎもせずに聞き入る。
いい夜だ。
東京生まれ。東シナ海の漁師でもある詩人。
1968年、新宿を人類滅亡を予言するデモで練り歩いた。
インドを放浪し、火山の島をえらび、旅をやめず、
いま首都高の下のやすらかな店の小さなステージで、
一本の古木のように立つ。
軸は天と地にまっすぐに保たれている。
拍手さえも魔となる、純潔な詩。
風と光りと雨がふりそそぐ肉体が生んだ言葉たち。
はじめてこころに沁みる"声の詩"だった。

 

カテゴリ:

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://konohoshi.jp/mt/mt-tb.cgi/235

コメントする