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言葉の風
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カラス、夜明けの復々讐

生まれてはじめてカラスから襲撃をうけた。
2度もそいつはこちらの頭をひっかけようと木から下りてきた。
つがいなのだろう、こちらを挟み込んでガーガーと威嚇する。
いったいなにが気に入らないというのか。
ここは自宅近くの毎日通るお気に入りの道だ。
これまで、おたがい干渉せずにやってきたではないか。
ここ数日、とかく意気消沈しがちな心を見透かされたような気もした。
なめられてならないと思い、小石をみつけては投げに投げた。
一帯は雑木林、当たらないのはわかっている。
それでもカラスの敵意に負けない敵意のこもった腕力を誇示したかった。
石に当たった木はいい音をたてた。
2羽は左右にとりあえず逃げ去るが、
適度な間合いを置いて木々の間からキロキロと視線をむけてくる。
さらに追いかけ、長めの小枝を林のすきまに投擲する。
10分程度、カラス退治がつづいた。
さいわいだれもこの谷間の小道を通らず、
滑稽ともおぼしい行動も目撃されることはなかった。
思いもよらず攻撃的な本能が発散され、
それはそれですっきりした。
カラスどもも、相手を間違えたと悟って、
どこかへ飛び去っていった。
全身にうっすらと汗をかき、いい運動にもなったようだ。
翌朝のことだった。朝といってもまだ夜明け前、
空が白んできた頃、たまたま目をさましてノートパソコンへむかっていた。
書斎もどきが窓際にある。マンション5階の南に位置する。
大きなガラス窓のカーテンは昼も夜も閉められることはない。
窓のむこうは森だった。
なにか刺すような視線がその森のほうから感じる。
そろそろウグイスが鳴き出すころかなと思っていると、
目の前の森から音もなく、黒く短い水平線があらわれた。
水平線はしなりながらどんどんこちらにむかってくる。
ラップトップの光源に照らされた部屋の男を狙っているのは明らかだ。
腹のものをぶちまけるような鳴き声がガラスをふるわせた。
窓いっぱいに黒い翼が広がった。
ヒステリックに伸ばされた足指もくっきりとまぶたに焼きついた。
すべては数秒のことだった。
しばらくして静かな森のなかから、
してやったりというカラスたちの鳴き声があがった。
その記憶力と視力を怖ろしいとも思ったが、
それ以上に、連中の賢さと果敢さが興をかき立てた。

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