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言葉の風
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饗宴の宇宙

丘陵地帯が家々とマンション群によって敷きしめられている。
いま暮らす横浜の港北ニュータウンは広大なベッドタウンだ。
そのなかに取り残されたように小山が散在する。
どれも5分か10分歩けば頂きに立てる。
濃いみどりのなかへ踏み込んでいくと、
空気が変わり、別世界に取り囲まれる。
竹がはちきれんばかりに幹を太らせている。
太陽の光は照りつけるのではなく、木々のすき間から
飛沫となって降ってくる。あるいは白い立方体が傾いで綾をなす。
雑木林は落ち葉で一年中ふかふかしている。
この季節、日当たりのいいひらけた場所には、
露草やヒメジョオン、クローバー、名の知らない雑草や野花が伸び、咲き、
あっという間にくるぶしからひざ頭をおおうほどに成長する。
その生命力はおそろしいほどだ。
秋までに雑草刈りが2度ほど入る。
丸刈りにされた直後を訪ねれば、あたり一帯すさまじい植物の匂いがたちこめる。
こなごなにされた"みどりの血"の匂いだ。
木々の下を歩く。
モグラが掘り返した新鮮な土がホクホクとしている。
ミミズがアリにたかられ、ちいさなヒルが背伸びをしていたりする。
熊蜂は、頭上1メートルあたりで重低音の羽音を立てている。
なんといっても身がすくむのはスズメバチで、突然、巨大なカラダを現して、
チラッとこちらにガンをつけ、去っていく。
昨日から近所の森では蚊が飛びはじめた。
手のひらや指を数カ所刺されて、かゆいったらない。
これで極楽浄土だった初夏の森は終わった。
森はいよいよ虫たちをもてなす、饗宴の宇宙となる。

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