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言葉の風
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夏、葉山。ロシア、潮騒。

細長い道のむこうに青い海がもりあがっている。
砂浜に降りると、海の家が組み立てられているまっ最中。
梁(はり)におかれたレコーダーからパンク音楽がほとばしっている。
波打ち際に小さなヨットが浮かび、沖合にはクルーザーが停泊する。
昨日、「神奈川県立近代美術館」葉山館へ行ってきた。
梅雨の中休み、夏の始まりを告げるような好天だった。
ロシア・アニメーションの巨匠ノルシュテインとヤールブソワ展を観に行ったのだが、
海辺に建つ美術館の美しさと環境のすばらしさが、
まずは、その周辺の探索にむかわせた。
葉山御用邸は目の鼻の先、遠くの岬に芝の公園もみえる。
さて、ノルシュテインとヤールブソワ。
20年ぐらい前だったろうか、「吉祥寺バウスシアター」に隣接する姉妹館で
50席ほどのミニシアターがあり、
そこでアニメ作品『霧の中のハリネズミ』『アオサギとツル』を観た。
忘れがたい強烈な印象を残した。
墨汁にでも入ったような、まっくら闇で映画を観るというのも
なかなかない経験だったが(上映館が意図的にそうしたのかはわからない)、
映像もまた、わずかな光りだけで成り立つような世界だった。
だから、客席とスクリーンという分け隔てがほとんどなく、
あたかもひとつの現実のなかに入りこんでしまったという錯覚に陥った。
これはたまらない錯覚だった。
今回の展覧会でわかったのだけど、
ある程度の奥行きのなかにガラス板を何枚か立て、
そこに切り絵を配置するという手法を作家たちは用いているのだった。
「マケット」という、いくつかのシーンの現物が箱のなかで展示されていたが、
いかにあの引き込むような深い世界が作り出されたか、
という謎に少し触れたような気がした。
湧き上がる創造力をみせつけるドローイング、
エスキースというアニメの1場面を再現した鮮やかな絵、
これだけ充実したノルシュテインとヤールブソワの展覧会は世界初という。
外光あふれるスペースでアニメーションも上映されていた。
だれもがじっと映像にくぎ付けとなっている。
白壁とガラス張りの空間はじつに明るく、じつに静か。
海の方からゆったりとした波の音が聞こえてくる。
白昼夢――漆黒のなかで観た世界とはまた違った、
不思議な幻想快感があった。

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