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Today's Shot / 言葉の風

2009年06月21日
Today's Shot
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言葉の風

ゼロ戦がニューヨークを爆撃している。
美少女が全裸でオオサンショウウオと戯れている。
千手観音が機関銃やサバイバルナイフを握りしめている。
「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」の世界は
予想通り、刺激にみちていた。
奈良美智、村上隆、会田誠・・・
そうそうたる面々の作品が集う。
恐怖や不安にふたをして世界は描きだせないし、
それは現代人が最もビビッドに反応するモチーフだ。
あるもの、ないものもそこから生まれてくる。
いつの時代でも、人はおもしろいことを欲している。
恐怖や不安も、いずれおもしろさのなかに取り込まれる。
未消化のままに。
それらを分解、消化してエネルギーに変換させること、
これまで味わったことのない世界観を生みだすことが
アートだと思うのだが。
その場から離れがたい、またそこへと向かいたい。
それが作品というものだ。

see you tomorrow!

ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション


2009年06月20日
Today's Shot
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言葉の風

それは横丁を抜けた裏通りの一角で起きた。
軽自動車が一台やっと入れるような細い道で
車いすに乗ったお年寄りが前に進めずに往生している。
車輪に手を掛けて力を込めるが少し進んでまた元に戻る。
道はほんのわずかだが傾斜がついていたのだ。
二、三歩先に行く中年の男性がすっと道に入り、
車いすを押そうとするが、乗っているお年寄りは
手を振って断る仕草をする。
80歳は越えているだろう。
べつに怒っているわけではないようだ。
男性はわきで見守る。車いすはいっこうに前に進まない。
見かねて、ふたたび車いすを押そうとするが、
お年寄りは手を振って断る。
じつはその道に入ろうとしているバイクが一台
止まって待っていたのだ。
苦笑する男性にバイクのおばちゃんが
「べつに急いでないから」と微笑む。
必死なのは車いすのお年寄りだ。
渾身の力をこめて車輪をまわす。
たぶん、いつもこの道を利用しているのだろう。
だから前に進めないというのは
あってはならない事態なのだ。
自分の道を自分の力で乗り切ろうとする人間。
困っている人を助けようとする人間。
他者を許容する人間。
その細い道には、最少規模ながら
あきらかに社会というかたちがあった。

see you tomorrow!


2009年06月19日
Today's Shot
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言葉の風

「弱いのだ。坂口さんは実に弱い人だね。
 最悪のことばかり予想して生活をしているね」
『無頼派座談会』のなかの太宰治の発言。
坂口さんとはもちろん坂口安吾のこと。
太宰は安吾にむかって、家庭をつくって、
家庭を大事にしなさい、
というようなことをいう。
「大事にする気がしない。
 寝取られることを覚悟しているということだよ」
安吾のその返答に対して、
太宰は、弱いのだ・・・と切り込んだのだった。
20年以上前に目にした太宰のこの言葉が
いつまでも記憶に残っている。
人間が生存していくためには、
最悪のシナリオを頭に入れておかなくてはならない。
これはある意味、自己保身のための強い生き方だろう。
ただ、最悪の事態に傷つくことを避けんがための
シナリオは“弱さ”に値するのではないだろうか。
裏切られるのが怖いから愛せない。
同じように怖れはいたるところにある。
自己保身は本能だが、本能を拡大する必要はない。
必要最小限ぐらいがいいのかもしれない。
今日は桜桃忌。

see you tomorrow!

引用出典:『太宰治 坂口安吾の世界−反逆のエチカ』柏書房


2009年06月18日
Today's Shot
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言葉の風

「注意! マムシ出没」
よく行く丘にそんな看板が立っている。
1万年前の縄文時代の集落跡が発見された場所で
丘の上は平坦となっているが、
この時期、雑草が膝の高さまで繁茂している。
野の中で、あるいは山道で、何かと遭遇することを
脳は、あらかじめ覚悟しているようだ。
原っぱで風に吹かれていると、
群生するヒメジョオンの一本が、ゆっくりと倒れていく。
また一本、倒れていく。風ではない。
ガサガサと地面の草が音をたてる。
すわっ、大蛇が横切ろうとしているのかと、
恐る恐る草をかき分けていくと、大きなカメが現れた。
オールのようにして短い手足を動かしている。
池は遠い。よくここまで登ってきたものだ。
ネットで調べるとその大きさと形から『クサカメ』と思われた。
草のなかから現れたのでなるほど『草亀』かと納得しかかったが、
『臭亀』という漢字表記が正しく、
身を守る際に臭い分泌液を出すことからその名がついたという。
さらにネットを“捲っている”と
亀火葬・亀葬儀のサイトを発見した。ペット霊園のガイドだった。
亀は焼けにくく、大型では150分の火葬時間を要するようだ。
お別れ式、納棺、お骨上げ、卒塔婆への入魂式などもある。
費用もばかにならないだろう。
亀には万年まで生きてもらいたいものだが・・・。

see you tomorrow!


2009年06月17日
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言葉の風

MANGAは、ほとんど読まない。
でも、浅野いにおは、天才だと思った。
MANGAにできて、小説にできないものはいくつかあるが、
いちばんの特典は、
ストーリーのなかに突然、ナンセンスなものを
挿入できることだろう。
それが無意味であればあるほどおもしろい場合もあるし、
そのセンスが問われる。
極北は、手塚治虫のつぎはぎされたガイコツ顔のキャラ
「ポンコツオジサン」だ。これがもたらす効果は絶大だ。
ストーリーの世界もストーリーを読んでいる現実の世界さえも
どちらも一瞬で消滅させる威力がある。「無」だ。
深刻さにむかっているときにこれをうまくやられると
その作家へのリスペクトは決定的となる。
ポンコツオジサン的な、ジョーカーはないものの
浅野いにおは、ナンセンス挿入にそのセンスが光る。
もちろんそれだけではない。
「ソラニン」では、ヒロイン芽衣子が、
ワイドショーで、陰惨な事件を見て、
地の底までテンションが落ちてしまう恋人を思う一コマがある。
そこにドキッとした。繊細なのだ。繊細さのなかからしか、
作家も天才も生まれない。

see you tomorrow!

「ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)」 浅野 いにお


2009年06月16日
Today's Shot
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言葉の風

梅雨空に紫陽花が映える。
あざやかな色の競演が散歩を楽しくさせる。
「七変化」と呼ばれる色の変化もまたおもしろい。
この時分、紫陽花はいちばん目を引くいわば主役だが、
野にはヒメジョオンが一面に白い花を咲かせている。
あまりの数の豊富さにその存在を忘れるほどだ。
蕎麦屋や割烹などに行き、
一輪挿しに野の花がさりげなく生けられていると、
それだけで、もてなしの気持ちが伝わってくる。
たいがいそういう店はいい店だ。
「一輪挿しに野の花」これにもあこがれる。
ヒメジョオンを手折って帰ろうとすると、
みるみるしおれていく。もうほとんど死体状態。
捨てるに申し訳なく、末期の水にと、コップの水にさす。
するとどうだろう。わずかの間に、
うなだれていた頭をまっすぐ天にむけ、
葉を水平に伸ばして、ピンピンとなるではないか。
野の花の生命力に驚いた。
野の“大部屋”で見るよりも、ずっと可憐で、
主役級の存在感もあたりに発している。

see you tomorrow!


2009年06月15日
Today's Shot
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言葉の風

小川や池で、サキイカをくくり付けた糸をたらし、
ザリガニ捕りをしている人たちがいる。
水辺にはそこかしこにまっくろな泥のかたまりが放置される。
ときに、いやな臭いも立ちのぼる。
でも、子どもたちは目を輝かせてザリガニ捕りに夢中だ。
ザリガニといえば「アメリカザリガニ」しか頭になかったが、
昨夜テレビを観ていて、恥ずかしながら「ニホンザリガニ」という
日本固有のザリガニを知った。絶滅危惧U種に指定されている。
つい、「アメリカ」が「ニホン」を滅ぼそうとしている
悪役かと思いがちだが、そうではなく、
ニホンザリガニは、森をすみかとし、
水温20度以下のきれいな水にしか生息できないという。
主食はなんと広葉樹の落ち葉。まるで仙人のようだ。
生きる環境が違うのである。
ところが「ウチダザリガニ」という大型種が昭和初め頃に
移入されてから捕食されるようになり、
絶滅の危機の要因となっているとのこと・・・。
そんな話ばかりの日本の自然環境だが、
森の隠者「ニホンザリガニ」に会いたくなった。
会ってから、なにか出来ることも見つかるかもしれない。

see you tomorrow!

生きもの研究室:http://gecko0912.web.fc2.com/HP3/zukan/photo/17/nihonzarigani.htm

参考: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ザリガニ


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