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Today's Shot / 言葉の風

2009年07月26日
Today's Shot
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言葉の風

池のほとりのベンチに寝転がって本を読んでいると
白い綿がどこからともなく流れてくる。
つぎからつぎと、小さな綿が雪のようにふってくる。
つまかえようと宙を握るが指のすきまから逃れてしまう。
立ち上がって本気になる。
昼寝をしているカルガモが横目をあける。
つかまえた白い綿をよく見てみると、
ゴマ粒の1/5ほどの茶色い“種”が包まれている。
なんと微小な生命の起爆剤だろう。
いったいどんな木がこの種を飛ばしているのか。
空をあおいでも木漏れ日に目くらましを喰うだけ。
葉っぱの海から綿は途切れなくふってくるが、
いっこうにみつけられない。
樹木のあいだに入っていくと、
葉の裏に無数の空蝉にしがみつかれた木などもある。
池のすぐ近くに、やっとそれらしい木をみつけるが
綿の飛ぶ様を確認できない。
綿ははるか上からふってくるからだ。
家に帰ってからネットで調べてみた。
「タチヤナギ」というヤナギ科の樹木でまちがいないだろう。
シダレヤナギのような華奢な姿ではなく、
大人の身長の10倍ほどもある堂々とした木だった。
あれだけの数の種を綿にていねいに包んで、
風のちからを使えばどこまでも旅をしていけるだろう。
いつもながら種を残すということへの智慧には驚かされる。

see you tomorrow!


2009年07月25日
Today's Shot
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言葉の風

人というのは初対面で会って、
すぐにわかり合えるものではない。
けれど、芸術というものは、
それと触れたと同時にその全存在が見渡せてしまう。
見た瞬間、あるいは聴いた瞬間、すべての情報が
流れ込んでくる。未知の情報がやってくる。
なんだがよくわからないが、いい!
と感じたならば、それはわかったということだ。
世田谷美術館で、利根山光人(とねやま・こうじん)という
画家を初めて知った。
1959年、光人がマヤ、アステカの古代レリーフから採取した拓本が
会場を内から蔽う。
神聖なエネルギーが放射されている。
等身の石の神官が目の前に確かに存在している。
太陽の王国に引き込まれた光人は、コロナを描く。
奇っ怪な太陽だが、科学が見る前、
だれもがコロナを知る前のほんとうのコロナが
そこにある。
「遺跡T」という作品では遺跡は存在しない。
いつまでも穿った穴があるだけ。
まっくらな深淵が口をすぼめている。
遺跡というものが隠れた「いきもの」のように感じてきた。
作品はただ見られているわけではない、
作品も私を見ている。
だから、わかり合える幸福感がある

see you tomorrow!


2009年07月24日
Today's Shot
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言葉の風

癖というのは直しづらい。
そばでだれかがいつも注意してくれたら、
うまくいくかもしれないが、
そんな忍耐づよい他人はいないだろう。
性格になると目に見えない分、さらに・・・。
ときに人が嫌になる。周期的なものなのかどうか
わからないが、人間の姿、顔を見るのもうっとうしくなる。
その心や本能をにじませた表情はできるだけさけたくなる。
厭人癖というやつかもしれない。
「蜜柑(みかん)」という掌篇が芥川龍之介の作品にある。
「不可解な、下等な、退屈な人生」に倦んだ男の前に
(男はいつも倦怠し、疲弊しているようだ)
下品な顔立ちをしたひとりの少女が現れる。
横須賀線の汽車のなかでの出来事だ。
身なりも不潔な少女に男の嫌悪感はますますふくらんでいく…。
突然、少女がトンネルのなかで窓をあけ、
煤煙が車内に流れ込んでくる。
男が咳き込み、怒りが頂点に達しようとしたとき
電車はトンネルを抜け出て、男は踏切脇に立つ
3人の小さな男の子を発見する。
少女は隠しもっていた蜜柑をその子どもらにほうり投げる。
奉公先へむかう姉が弟たちへ与えた蜜柑だった。
その光景を目の当たりにした男の世界観は一変する…。
4、5ページの作品だが、
読み返すといつも頬を打たれたような気持ちになる。
今日は「河童忌」。

see you tomorrow!


2009年07月23日
Today's Shot
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太平洋上と硫黄島での皆既日食はパーフェクトだった。
テレビを生中継で観ていたが、まず船上から映し出された
コバルト色の凪いだ海と夏雲が360度、水平線につらなる光景に
目がくぎ付けとなった。ハイビジョンの映像力はすごい。
太平洋のまっただなかにいるような恍惚感を覚える。
そして、皆既日食。漆黒の月の背後から広がる太陽コロナ、
プロミネンスの赤い炎の踊りがズームアップされる。
水平線が全周、夕焼ける。海は一面群青色に姿を変える。
金星が真昼の空にあらわれて光りだす。
このスペクタクルに人間はなにも関与できない。
見ることしかできない。
だから、見ることは大切だ。見ることで十分だ。
皆既日食を見に出かけた人で、
それを見ることを
祈らなかった人はいなかっただろう。
祈りが届くか、届かないか、
人間も自然も関与できない。

see you tomorrow!


2009年07月22日
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言葉の風

今日は日食が起こる、
いま5時12分、関東地方は厚い雲におおわれている。
皆既日食が見られる種子島はというと、
曇り時々雨という残念な天気予報。
2年前の夏、そのとなりの島、屋久島へ行ったが、
「月に35日雨が降る」と言われるだけあり、
シトシトと降られた。その雨のおかげで原始の森は、
いっそう深く胸のなかにしみこんだのだが・・・。
屋久島から、さらに南東につらなるトカラ列島。
そのなかの悪石島では、
6分25秒という最長の皆既日食が観測される。
今世紀見られる最大の長さとなる。
注目を集めるトカラ列島だが、ここはじつにおもしろいところだ。
平家落人伝説が各島に残されていたり、
宝島は、スティーブンスンの小説『宝島』のモデルとなったことでも知られる。
鬼界ヶ島には、入水した安徳天皇の子孫を名乗る人もいた。
もうひとり忘れてならないのは、
かつて諏訪之瀬島にコミューン「バンヤン・アシュラム」をつくった
日本のビートニク“ナナオ・サカキ”だ。
去年12月に85歳で天寿を全うした。
全行程、アウトサイダーとしての人生だったが、
地球と宇宙に肌をいちばん近づけた詩人だった。
これから世に出ていくだろう。

see you tomorrow!

NANAO SAKAKI LOVELETTER(詩の朗読)
http://www.youtube.com/watch?v=zjnB5f9-lNE&feature=related


2009年07月21日
Today's Shot
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言葉の風

シリン・ネザマフィさんの「白い紙」を読んだ。
イラン人女性が日本語で書いた小説で、
芥川賞候補にもなった作品だ。
イラン・イラク戦争当時の素描を見る印象を持ったが、
テレビなどの映像では決して伝わらない、
イラン女性の内心が語られていて興味深かった。
男はひたすらモスクで祈り、女はチャドル姿で髪と顔を覆い隠す。
イスラム文化圏のステレオタイプなイメージだが
間違いではない。ただ、この一見、同じ世界に見えるなかに
人それぞれの違いとディティールがある。当たり前のことだが・・・。
人種や文化が違えば違うだけ、
人間はお互い、固定した簡略化した見方をしがちだ。
烙印を押す。そのほうが便利で都合がいいのだろう。
「多様化」というテーマはこれからの世界観で最も重要になってくるだろう。
シリンさんの小説を読んで、イスラムの宗教や文化は遠いと感じたが
心理や生活面での詳細な描写に同調する。
人間、大義が違っていてもディティールでは同じなのだ。
多様性への理解には、
このディティールとの対面が必要なのではないだろうか。
その描写にいちばん優れているのは、小説や映画ということになる。

see you tomorrow!


2009年07月20日
Today's Shot
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言葉の風

プールからの帰り道、
大きなアオダイショウと遭遇した。
小川をはさむようにして散歩道が2本つづく。
ヘビは川の茂みからあらわれて泳ぐように
私たちの目の前を横切ろうとしていた。
長さは160センチほど。灰色に青みがかった色が混じって、
その皮膚はねっちりとしている。
「きれいだなあ」と感嘆させるものの
自転車のうしろで娘がワーワーと泣き叫んでいる。
これだけのヘビは一生に何度も見られるものではない。
静かに見守ってやりたかったが、
近くでザリガニ捕りをしていた男の子がやってきて
釣り竿でたたきはじめた。糸が邪魔をして思うようにいかない。
そんな幼稚な暴力を横目に、アオダイショウは涼しい顔で
崖をするすると上って山の中に吸いこまれていった。
「蛇はわが国でも谷神(やとのかみ)といい、神とされた」※
このあたりは谷戸(やと)と呼ばれる丘陵地の谷間が
特徴的な地勢となっている。まさにここも谷戸だ。
この日、太陽が沈む前、空に大きな半円形の虹がかかった。
中国で「虹」は、「蛇」や「竜」の一種とみられているらしい。
また、世界各地に「虹蛇(にじへび」という神話・伝説上の蛇がいて、
創造と雨を降らす力をもつといわれている。
蛇と虹の発見で、ちょっぴり神聖な気分になった。

see you tomorrow!

※ 『常用字解』白川静 より引用。

虹蛇 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%B9%E8%9B%87


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