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Today's Shot / 言葉の風

2009年10月18日
Today's Shot
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言葉の風

この人いいなぁ・・・、すてきだなぁ・・・。
熱烈ではない、でもその人を遠くからいつもみているかんじ。
加藤和彦さんはそんな位置にいた。
2、3ヵ月くらい前、
サディックス・ミカ・バンドのファースト・アルバムに入っている
『シトロン・ガール』が急に聴きたくなった。
が、レコードは持っておらず、そのままとなった。
あたまの隅っこにその欲求はいまも残っている。
吉田拓郎のアルバム『人間なんて』のアレンジもしている。
そのなかに拓郎作品のなかで一番好きな歌が入っている。
『どうしてこんなに悲しんだろう』という曲だが、
間奏にハモンドオルガンのようなものが流れる。
意表を突いたアレンジだったが、これが心にしみた。
このオルガンあってのマイ・フェバリットなのだった。
サトウハチロー作詞『悲しくてやりきれない』は永遠の名曲だ。
独特のふるえた声、歌はお世辞にもうまくない。
でも、1小節歌っただけで加藤和彦だとわかる。
フォークル・セダーズ『青年は荒野をめざす』は、
はじめて自分で買ったレコードだった。
1969年、ドーナツ盤がまわり、
あの曲からなにかがはじまった。
ひとりで逝くときまで、それは終わらない。
歌はつづいている。

see you tomorrow!


2009年10月17日
Today's Shot
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言葉の風

森や野っぱらを歩いていても
虫に刺されることがなくなった。
里山散歩派にとってはありがたい。
これからの季節、ちょっと林のなかに入れば、
なんともいえない芳香にひたれる悦びがある。
ひんやりとした空気に落ち葉の香り、
そして枯葉のつもった道を踏みしめる感触。
雨があがった翌日などは、しっとりとした森の空間が
からだに浸みてくるようだ。
ここに『道ばたの四季』という絵本がある。
どの頁を開けても、見覚えのある風景がひろがる。
野山があり、水辺があり、田畑、人家が描かれている。
この本は、東京のど真ん中に住んでいるときに買ったものだ。
野の草花や生きものの名を知ろうとして手に入れたのだが、
日本の田園風景を写し取った素朴な絵に
魅せられたことも大きい。
東京の下町からは遠い遠い光景だった。
秋の頁をめくる。
オナガがコバルトブルーの尾を伸ばして飛んでいる。
イチジクが熟れはじめている。コガネグモが巣を張り、
アシナガバチがブーンと飛行する。アカタテハが舞い、
コスモスが咲き、ハサミムシが地を這う。
絵の中には、虫や野鳥、野の花などの
たくさんの生きものがひそんでいる。
いま、それらのけしきは目の前にある、散策の途中に。
それはもちろんひそんでいる。
ひそんでいるのを教えてくれたのは
『道ばたの四季』という絵本なのだった。

see you tomorrow!

『道ばたの四季』 たかはし・きよし 絵 / 岡部牧夫 文 / 福音館書店


2009年10月16日
Today's Shot
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言葉の風

ロックもジャズもクラシックも
ほとんど聴かなくなってしまった。
しずかな環境で生活しているからかもしれない。
ただ、聴くときには全神経を集中させて聴く。
家にだれもいないとき、
さあ、聴くぞ、とコンポの前のソファにどっかと腰をおろす。
もしくは、携帯CDプレイヤーにヘッドホンをつけて
窓辺のディレクターチェアにもたれる。
LET IT BE...NAKEDを聴いた。このCDをはじめて聴いたときは、
そのクリアな音に心底おどろいた。
これまでつもった人生のホコリがひと拭きにされたような、
はじめてビートルズに出会った10代の頃に帰れたような、
爽快な気分になったのを覚えている。
そのときはクリアだということそれだけで感激していたが、
いまはひとつひとつの楽器の音に耳をすましている。
I'VE GOT A FEELINGのポールが弾くベースのメロディラインの美しいこと。
GET BACKのジョンのストロークとカッティングの力加減、
DON'T LET ME DOWNのリンゴの絶妙なドラミング・・・
音のリアルさだけに耳をすます。
(このアルバムではジョージはあまりいいものが出ていない)
思い出のいっぱいつまったビートルズ音楽に
また、あたらしい空間がうまれるような感じがする。
ビートルズのリマスター盤が発売されている。
しかし、いまのところ食指は動かない。
なぜかはわからないが。

see you tomorrow!


2009年10月15日
Today's Shot
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言葉の風

神保町の「岩波ホール」は、独特の雰囲気を持つ映画館である。
10階という高層にあり、ロビーでは左右の窓から日が降りそそぐ。
興行の場というよりも講義が行われそうな感じもするが、
支配人、高野悦子さんの目利きによる上映なので、
鑑賞に堪える作品であることはまず間違いない。
はじめて訪れたのはF・トリュフォー『緑色の部屋』の上映の時だ。
1980年、もう29年経つが、いまでも死者のための蝋燭の炎が
頭のなかで揺らめきだす。
昨日は『アニエスの浜辺』を観に行った。
“ヌーヴェル・ヴァーグの母”とも呼ばれるアニエス・ヴァルダ監督の
自伝的映画といったら手っ取り早いが、
「アニエス・V=映画」の過去と現在をコラージュした
アート作品のようだった。
制作時は79歳だったと思われるが、
セーヌ川を小舟で遡行したり、
なつかしいカウンターカルチャーの地ロサンゼルスを訪ねたりする。
撮影当時少年だったが、いまはアニエスよりも老けてしまった
海辺の人たちと再会したりもする。
エイズで他界した夫ジャック・ドゥミへの追慕が悲しさを誘うが、
いまこの時が幸福そのものであることを高らかに歌いあげた映画に救われる。

see you tomorrow!


2009年10月14日
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言葉の風

空を守ろうとしたら
大地を汚さなければならなくなった。
NHKスペシャル「原発解体〜世界の現場は警告する〜」をみた。
温暖化対策でCO2を排出しない原子力発電の導入が世界各地で
ふたたび増えだしたという。
日本を含む先進国で100基の導入計画が進んでいるというが、
その裏では120基の原発施設が寿命をむかえ、
解体の必要に迫られている。
ところが放射能汚染された廃棄物を処分する場所がない。
処分といっても密封して地中に埋めるだけである。
プルトニウムはその放射能を半減させるのに2万4千年も要する。
いまの人類の力では放射能を鎮めることは不可能なのだ。
まずいことだわかっていながらも事態は進んでいく。
正直、無力感を覚える。
しかし、無力感から無関心になるのだけは避けたい。
不可能な課題でも、それに取り組むことで
新しい方向性が生まれ、認識が深まるはずだ。
取り組むとはどういうことか?
それは知るということからすでにはじまっている。
取り組みとは闘いではない、
知的に関心を持続させることにある。
そして、他者と考えや思いを交流させることにある。

see you tomorrow!


2009年10月13日
Today's Shot
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言葉の風

秋は“すみか作り”の季節でもあった。
立ち枯れた葦原(あしはら)に入っていき、
根もとの茎をふみ折り、自分たちが座れる場所をこさえる。
背丈をこえる葦がぐるりと囲むなか、
そこだけぽっかりとした空間となる。
もうそれだけで、みんなわくわくする。
ごろりと寝ころんで、
ふかふかに乾いた葦の匂いを胸いっぱいに吸う。
近くでモズが鋭くなき、空がどこまでも青い。
まずは仲間とキャラメルやマーブルチョコレートなどを
わけあって食べる。
ここがオレたちの“すみか”となる。
40年以上前のことでも、すみかの思い出は鮮明だ。
最近、『himitsukichi』という写真集を本屋で見かけた。
東京近郊で発見した子どもたちの“秘密基地”を撮ったものだ。
すみかはもちろん秘密基地でもあった。
時代と場所が変わってもなにも変わらない。
近所の竹やぶのなかにもぽつんと椅子が置かれ、
ビニールの屋根がかかったちいさな秘密基地がある。
散策していて、微笑ましい基地をいくつか見かける。
一瞬、それはインスタレーションのようにも見える。
子どもの秘密はかくされた作品でもある。

see you tomorrow!

『hi mi tsu ki chi ヒミツキチ』西宮大策(小学館)


2009年10月12日
Today's Shot
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言葉の風

さすがに夏をなつかしむ気持ちはもう失せた。
空は青く、風もつめたくなってきた。
道にはドングリが敷きつめられ、
キンモクセイの香りがふいに鼻先へやってくる。
芝の斜面にあおむけに寝ころぶと
思ったよりも空がちかくにみえる。
高い雲はなかなか動かないが
低い雲はいろんなかたちのものが
つぎつぎと行き過ぎて、まるで
青いサファリを移動する白い動物のようだ。
その空の奥に蚊ほどの大きさの鳥が舞うのを発見した。
目を凝らさないと見えないほどの高さを飛んでいる。
3、4羽が旋回したり、気流に乗って、
上昇と下降を繰り返している。
黒い姿からカラスのようでもあるが、はっきりとはわからない。
仲良くひとところに留まり、飛行そのものを楽しんでいる。
目測で4、5百メートル、ときに羽に
太陽が反射し銀色にフラッシュする。
そのはるか斜め上空を
羽田空港から離陸した旅客機が機首を西へむけて
じっくりと空を進んでいく。
かと思うと、一匹の黄蝶が5、6メートル先の空を
ふわふわりと飛んでいく。
この青い空も捲りあげたら、月面から見上げたような
漆黒の宇宙空間が現れるのだ。
青い色は無限な感じを与えるが、地球の青は薄っぺらだ。
この星で、青は、いちばん悲しくて、
いちばん愛おしい色だ。

see you tomorrow!


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