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2009年7月1日掲載

音楽プロデューサー星川京児のルーツ・ミュージック・コラム このほしのあなたの知らない音楽

vol.2 オーズ・コムズ(口琴)が活きる 中央アジアの異端児、キルギスの美しい恋愛歌

キルギスの音楽

キルギスの音楽
カンバルカン・フォーク・アンサンブル
KICW-85079(キングレコード)

シルクロードに花開く豊かな音楽。叙事詩マナスの弾き語りや恋の歌などの歌唱と国民楽器コムズをフィーチャーした器楽曲を収録。

誰にも思いこみはあります。音楽に関してもそう。ヨーロッパは和声、アジアは旋律、アフリカはリズム。大筋では間違ってはいないのですが、例外が多すぎるのです。

「リズム音痴のアフリカ人」というジョークがありますが、誰もが巧い訳ではありません。何より、先住アフリカ人といわれるピグミーやコイ人、サン人は太鼓を持たないのですから。通常のアフリカでも、トーキング・ドラムが対話するようなポリリズムがあれば、和太鼓風なリズムを持つブルンジの儀礼太鼓もあるのです。

ヨーロッパしかり。バルト三国のように透明感のある合唱があれば、テンション系の音が引っ張るブルガリアン・ヴォイスもあります。スピード感溢れるユニゾンの地中海系から、まるで古楽のような対位法が煌びやかに響く中欧のアンサンブル。どちらもこれで踊るというのだから、必ずしもヨーロッパのDNA 云々の話ではないはずです。

キルギスは旧ソ連中央アジア5共和国の一つ。ウズベク、トルクメニスタンと同じトルコ系といわれますが、外見はモンゴルや中国などアジアっぽく見えます。広大なカザフと中国に挟まれていますからそう感じるのかもしれませんが、この辺りでは異色の民族です。

なんといっても7音階で音楽が作られているというのが驚き。モンゴル人も漢族も日本人同様5音階なのですから。9世紀にはキルギス帝国を建てたのも、この文化の特異性があったからでしょうか。脈々と語り続けられた世界で最も長い叙事詩【マナス】は、この誇りと強靱な民族精神の賜物なのかもしれません。

対して「ああ、夜鶯よ」は美しい女性を称える恋愛歌。なにより国民楽器のコムズと、世界でも珍しい音程をコントロールするオーズ・コムズ(口琴)が活きています。遊牧の民独特の朗々とした歌声と、強弱の利いた和声を持つコーラスが見事です。

精鋭を揃えたカンバルカン・アンサンブルの洗練されたアレンジは、一聴の価値あり。

星川京児 (民族音楽プロデューサー)

試聴する:「ああ、夜鶯よ」


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