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2009年11月19日掲載

音楽プロデューサー星川京児のルーツ・ミュージック・コラム このほしのあなたの知らない音楽

vol.4 パキスタンの恍惚舞踏 「古典理論」による高度なスタイル、トランスに導く迫力

パキスタンのカッワーリー〜メヘル・アリー&シェール・アリー

パキスタンのカッワーリー〜メヘル・アリー&シェール・アリー
KICW-85007(キングレコード)

南アジアのイスラム神秘主義に関わる宗教歌謡カッワーリー。その中心パキスタンで絶大な人気を誇るメヘル・アリー&シェール・アリーのアンサンブル。

仏教やキリスト教、ヒンドゥー教といったメジャーな宗教はもとより、シャマニズムのように自然と一体化した素朴な宗教に至るまで、あらゆる宗教が音楽を持っています。クラシックでいうところのミサや賛美歌。楽器を一切使わない上座部仏教の聲明(しょうみょう)から、音楽的にきわめて高度な数学的背景が見られるチベット仏教。なんとも賑やかな朝鮮の梵唄。もちろんお水取りや真言・天台の声明まで、宗派を超えて歌うのです。

あまり関係がないと思われる神道にも、祝詞(のりと)のように音楽の範疇で捉えられるものがありますし、韓国の巫楽のように歌だけでなく強烈なリズムの饗宴を伴うものも。この技術はサムルノリなどにも引き継がれているといえば判ってもらえるでしょうか。

本来、世俗的な歌舞音曲を好まないとされるイスラーム教。特にスンニー派の一部には、祈りへの呼びかけ、アザーンすら音楽的に過ぎると規制する組織もあるのです。

とはいえ、音楽がなければ生きていけないのが人間。素晴らしい宗教音楽を生み出してきました。演奏ではトルコのコンヤに伝わる旋回舞踊があり、ターリカと呼ばれる修道院にはジクルという神を称える儀礼があり、トランスを伴う凄まじい迫力を持っています。

そんな中で、世界に最も知られているイスラーム歌謡が南アジアのカッワーリーでしょう。13世紀のスーフィー詩人アミール・フスローが創始したこの歌謡スタイルは、古典音楽の理論に裏打ちされたきわめて高度なもので、現在では様々なスタイルが継承されているのです。とはいえ、迫力という点になると、やはりヌスラットを生んだパキスタン。彼やサーブリー兄弟亡き後のカッワーリー界を支える筆頭が、メヘール・アリーとシェール・アリーでしょう。

恍惚舞踏ダンマール創始者のシャハバーズ・カランダルの作品はポピュラーで多くのカッワールに歌われる。それだけにアレンジなどにも工夫がなされています。このトランスを伴った迫力こそカッワーリーの魅力なのです。

星川京児 (民族音楽プロデューサー)

パキスタン・カッワーリー:ダンマール(恍惚舞踏) メヘール・アリーとシェール・アリー


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