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2010年1月21日掲載

音楽プロデューサー星川京児のルーツ・ミュージック・コラム このほしのあなたの知らない音楽

vol.5 「タック・スーレィ」パシャ・イシャ 乾燥した空気の生んだ強靱な声

ウイグルの音楽〜ムカームと民謡

ウイグルの音楽〜ムカームと民謡
KICW-85081(キングレコード)

最高の実力と人気を誇る国民的歌手パシャ・イシャの声に様々な楽器の名手達の名曲の数々。ウイグルのオアシス都市に栄え演奏されてきたウイグル音楽の集大成12ムカームからチャビアット・ムカームを収録。

別に沙漠の民に決まったことではないのですが、人より強靱な喉を持つ人たちがいます。なぜかそれは乾燥地帯に多いようです。それだけ声(音)を通さなければならないということでしょう。一般に砂地のような乾燥地帯は、音を吸ってしまうことが多いのです。そういう意味では必要が生み出した唱法なのかもしれません。

インドのタール沙漠、イランの砂漠地帯、マグリブ諸国(北西アフリカ)に広がる、ファルセットをひっくり返したような、喉に負荷がかかる「フューフュー」という歌声は、女性たちが葬礼や婚礼などに発する声と同じ独特のものです。これらの地域のなかには、普段、あまり感情を表に出さないイスラームの女性たちもいますが、乾燥した風土では、抑制された発声よりも、通りのいい声が重宝するようです。

そんななか、一聴、細い声のようですが、間近で聴くと鼓膜が張り裂けそうなパワーを感じさせられたのが中央アジアの諸民族。実際に彼の地で耳にしたのはトルクメニスタンとウイグルの二人のディーヴァ(歌姫)でした。一つは典型的な遊牧民族社会であるトルクメニスタンこと。名馬テケの産地としても有名です。国土の85%を占めるカラクム砂漠ではあらゆる音が吸われてしまうのですから、声も強くなろうというものです。

片やウイグルは、かつてはともかく、現在はオアシス定住の農耕を主体とした社会。同じ中央アジアのイスラーム民族としても若干ニュアンスは異なります。強靱ではあってもどことなく艶があって、日本人の感性には合っているのかもしれません。

パシャ・イシャは中国の新彊ウイグル自治区を代表する歌手です。特に、最初に聴いたのが1980年代のまだ平和だった時代で、漢族もそんなに目につきませんでした。録音はもっと後になりますが、現在のような動乱もありませんし、のびのびと歌っています。

それから数年後、他の音楽を録りましたが、どこか緊張したものが感じられました。音楽に限りませんが、民族芸術の表現というものは、社会的な背景と切り離しては考えられないようです。

星川京児 (民族音楽プロデューサー)

「タック・スーレィ(山水)」パシャ・イシャ


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