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2010年7月28日掲載

音楽プロデューサー星川京児のルーツ・ミュージック・コラム このほしのあなたの知らない音楽

vol.9 語り継がれる民族の言葉と魂 - 不思議の癒し アイヌのユカラ

アイヌのユカラ〜萱野茂

アイヌのユカラ〜萱野茂
KICW-85126(キングレコード)

アイヌの民族叙事詩ユカラは世界に誇れる口承文学。その伝統を守る故・萱野茂が語る壮大な物語。

世界に"民族"という枠で分けられる人たちがどれだけいるかは知りませんが、その多くの民族が神話を持っているようです。国造り、祖先の出自を物語るもの、英雄譚など、大手の宗教、特に排他的な一神教に征服されない限り、現在もなんらかの形で残っているようです。なかにはポルトガルの「ウズ・ルジアダス」のように国威昂揚のために作家によって書かれたものもありますが、本来は口伝で残された物語。それもある種の歌、韻文であることが多いようです。だから民族叙事詩とも言われるのでしょう。

そういったなかで有名なのが、メソポタミアの「ギルガメシュ」、イラン「シャー・ナーメ」などですが、作者や編纂者がいない、まさに民族伝承ということになると多くはありません。その代表がアイヌの「ユカラ」です。本来ユカラという言葉は「真似る」という意味ですから、民族で代々語り継ぐという趣旨にピッタリなわけです。同じようにフィンランド「カレワラ」も、現在のようにまとめ上げたのは19世紀のこと。エリアス・リョンロートという医師が行ったものを、ロシア帝国からの独立の心の拠り所としたといいますから、民族叙事詩というものはナショナリズムとは関係を切れないようです。

他にもキルギスの「マナス」やチベットの「ケサル王」などがありますが、いずれもプロの語り部がいて、それぞれ技術を磨きながら現在も歌い継がれています。「マナス」など2003年ユネスコの無形遺産に選ばれているほど。「ユカラ」の方は、いわゆる語り部を生業としている人はいません。まさに民族の宝なのです。私たちのお願いした萱野茂(かやの・しげる)さんにしても、本業は当時、参議院議員。でも、きっちりと語れるのはさすがというか、驚きでした。

アイヌの言葉こそ判りませんが、独特の跳躍感を持つ節と、寄せては返す波のようなリズムが相俟って、不思議な癒し効果のある"音楽"となっています。私も録音中に何度か、忘我の境地になりました。どこか永劫回帰的なヴィジョンを視てしまうというと大げさでしょうか。一度は経験していただきたい音世界であることだけは間違いありません。

星川京児 (民族音楽プロデューサー)

ヤイド レンペコイキ (自分の憑き神と喧嘩をする)


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