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2010年9月8日掲載

音楽プロデューサー星川京児のルーツ・ミュージック・コラム このほしのあなたの知らない音楽

vol.10 繊細な二弦の響き、哀切にみちたクルドの叫び - イラン『クルドのナヴォイェ』

イラン/ホラーサンとアゼリーの音楽

イラン/ホラーサンとアゼリーの音楽
KICW-85138(キングレコード)

民族が様々に交差するイラン北東部ホラーサンと北西部アゼリー。二つの地域からペルシャ音楽とはかけはなれたドタールの名人芸とアンサンブルの妙を紹介。

この音を聴いて二弦の楽器だと思う人は、かなり弦楽器に詳しい方でしょう。それぐらい激しく、また繊細で華麗な響きを生み出しているのです。もともとイランは楽器の故郷といわれるくらい様々な種類のものがありますが、なかでも弦楽器は豊かで、世界各地の現役楽器の源(みなもと)となっているのです。

代表的なものを幾つか挙げると、サントゥールという桴(ばち)で打つ楽器は中国で揚琴(ヤンチン)、朝鮮ではヤングムとなりましたし、西に向かっては東欧のツィンバロムや西洋のダルシマー、そして最終形としてのピアノになります。今でこそあまり使われませんが、バルバットはアラブに移りウードとなり、後にリュートとして、最後はギターまで。東に向かっては中国のピパ、そして正倉院の琵琶としてゴールを迎えます。五弦直頸(ごげんきょくけい)、四弦曲頸(よんげんきょくけい)などは、インドとルーツを分け合うものの、その影響力はとてつもなく大きいといえるでしょう。

ここで伴奏というか掻き鳴らされるホラーサンのドゥタールというのは、ドゥ=2、タール=弦という意味の撥弦(はつげん)楽器。漢族の三絃や沖縄の三線(さんしん)と同じく、そのままの名前ですが、シルクロード周辺の国々では最も庶民的な楽器です。中央アジアのウイグルやトルクメニスタンでは、ほとんど国民楽器といえるほど。音楽家でなくても爪弾く人は少なくありません。
芸術音楽の盛んなイランではセタールという三弦が活躍しますが、これも二弦はマンドリンのようにコースになっていて、実質は二弦楽器です。 サイズも小型の三味線くらいで、弦はスティール。もっともこれは近代になってからでしょうが、繊細なフレーズは絨毯(じゅうたん)のようなきめの細かさを持っています。

なにより哀切に満ちたグラン・フセイン・ミルザーイの歌が凄い。これこそクルドの叫びなのです。いまだに自分たちの国を、安住の地を持つことが叶わぬ悲劇の民族ですが、その勇猛さは対十字軍の盟主サラディンに代表される強靱な精神力を持つ人々。見捨てられた恋人が歌うナヴォイエは、その精神(こころ)の反映といえるもので しょう。

星川京児 (民族音楽プロデューサー)

イラン『クルドのナヴォイェ』


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